魔王と勇者と暗殺者第四十二話
遺跡の眼前は異様な光景が広がっていた。荒涼とした砂漠地帯が遠く彼方まで広がる遺跡周辺に集った者達はおよそ30名。
その全員が今、目の前にある光景を説明する事が出来なかった。
「な、なんだこれは。」
戦士の一人がそんな言葉を漏らした。
「俺達の着いた時にはこの有様だ。」
砂地には、小さなくぼみが無数に存在していたのである。決して深くはない。躓くかどうかの僅かなくぼみ。
だが、その存在が既に異常。
何故、風が吹いて砂を運ばない。その空間に。風が吹けどもそのくぼみに砂が入る事は無かった。
一人の戦士がそのくぼみを調べるために剣を入れてみるが、異常は見られない。意を決して、足を入れてみても何もない。
だが、砂はそこに入る事は無かった。
「一体、これは……。」
イーナも初めて見た現象であった。
「罠、はないよね?」
ハルカは呆気に取られながらも可能性の一つを言葉に出した。
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