魔王と勇者と暗殺者 第三十八話
どんよりと垂れさがる空の下。険しい山に囲まれた盆地がそこにはあった。山々を白く染め上げる雪の冷たさがあるにも関わらず、その盆地には草原の緑が広がっていた。
その色彩濃い空間には、大きな建造物が静かに、佇んでいた。高い城壁に囲い込まれたそこは盆地の中の、さらに小さな区切られた空間として存在している。
蠢く者達は多くは無い。だが、乱雑に敷かれている通路は一つの終着へと導く。
一際は大きい建造物へと辿りつくように。そしてその建造物はまるで何かを堰き止めるように、ただただ広がる草原の先に向けて巨大な壁を聳え立たせていた。
その先には、建造物と同程度でありながら、不完全なゆらめきを見せる門が一つ。
*
あの大規模な戦闘から二週間が過ぎ去った。カズヤは3日目に眼を覚ます事になったのだが、目覚めると開口一番で皆への謝罪が聞かれていた。
「ごめん!でも、俺の中でケジメっぽいのは一応、ついたかも?」
曖昧でカズヤ自身も判っていないようなこの言葉に全員がおどけて見せた。
「ハルちゃん……ありがと。なんかさ。酷い所見せたかも。」
カズヤはそう照れながらハルカに感謝の言葉を言っていた。
- 関連記事




