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短編小説 俺とモヤシ


俺はある日。奇妙な出会いをした。

何故か興味を持った。

ある男に。軟弱でひょろひょろとした野郎で、俺に媚び諂うクソみたいに付き纏う自称舎弟どものパシリだった奴だ。

そんな野郎の存在すら俺にはどうでもよかった。

強い奴に喧嘩ふっかけて殴り飛ばして、俺が強ぇ事を証明したかっただけだ。そんな行動をしていくと次第にクソみたいなやつが慕いだす。

迷惑に思う時もあったが、奴らは強い奴の情報を持ってくる事ができた。だから俺は奴らを飼ってた。適当な躾は施したが、後は勝手にやらせた。

徹底させたのはてめぇのケツはてめぇで拭く事。

俺は、面倒事が嫌いだ。

そういっているのに、助けてくれと懇願する馬鹿が来る。喧嘩なら、金よこせばぶっ飛ばしに行ったがな。

そんな日々を送ってた。

何故かって言われても、それが楽しかったからとしか言えない。

道場とかボクシングとか。

ガキの頃から手が出るのだけは速かった俺を親はそういったモンにいれて直そうとしたのかもしれない。

だが、俺はその檻の中で、どんどんでかくなっていった。

年上だろうが、なんだろうが構わず喰った。食いつくした。

ジムで道場で俺より強い奴は消えていった。師範でもコーチでも奴らはしょせんじじいどもだ。

老獪ではあったが、力で俺に勝てるはずもない。

だが、俺はそういうじじいには敬意を持っている。

俺ですら、じじいどもの技術というモンにはかなわねぇ。だがよ。

それは歳食っていけば身に付くもんよ。俺はそう考えた。そう決めた。

だから、そして、日々クソつまらない稽古するよりも楽しい事を見つけた。

切っ掛けは簡単な事だ。道場やってるボクシングやってる。

それだけの理由で喧嘩のスケットを頼まれた。金を持たされて。

二十人相手にこっちも同数。途端に入り乱れての乱闘になった。

その時、俺の中で何かがあふれ出て、全部知った。

俺は心底楽しかった。殴り、蹴り、殴られ、蹴られ。相手の顔を潰し、俺の鼻を折る。そんなドロドロの喧嘩っていうのが心底楽しかった。

だから、俺は今の日々に満足している。仕事しろとかも言われねぇ。かといって極道に行くわけでもねぇ。

今は今だけを考えている。どうせ、俺の高校は行くところなんてきまってる。

だからこそ、俺は俺の人生を。俺の高校人生を喧嘩で生きる事にした。

そんな時。そんな時だ。

そのひょろひょろしたパシリ野郎を眼に止めた。

奴は殴られてた。買ってきたモンがちげぇという理由で。殴られてた。

だが、そうじゃなかった。

思わず、笑っちまったぜ。

あのもやし野郎は殴ってもらっていたんだよ。

マゾでもなんでもねぇ。殴られるまであいつは眼をずっと開いてた。

殴る野郎がどんな軌道で何処に目掛け拳を持ってきているか。全てを見逃さないように。

「おい。」

「あ、ハルヒコさん。」

「こいつ借りるぞ。」

「え?」

驚いたように声を洩らしやがった。叱られる餓鬼みてぇなうぜぇ顔しやがってよ。

「あぁ?」

「あ、いえ、どうぞ。おら。行けよ。」

「おい、付いてこい。」

俺の言葉にもやし野郎は素直に従った。

しばらく歩き、誰も居ない駐車場に入った。

奴は何処からどう見ても弱そうだった。日には焼けている。だが、素肌が見える腕は太くもなかった。

だが、どうだ。対峙してみるとコイツはぁ、面白い。動じない。物怖じしない。

「なぁ。おい。てめぇ。なんであんな事してんだよ。」

もやし野郎の眼が変わった。良い面構えになった。

喧嘩してきたどんな野郎よりも良い面だった。いかつい訳でも強面でもない。

普通の男だ。何処にでもいそうな野郎。

俺だって、今の今まであの場面を見るまで気にもしなかった。

もしかしたら何度か会っているかもしれねぇのによ。

「君、強いね。」

開口一番!

不敵だぜぇ。ますます気に行った。面白い野郎。

「はっ!良いねぇ。その面。やろうぜ。」

「良いよ。」

構えも無し。正直ムカついた。

何処か余裕のある笑みを浮かべやがったその野郎に俺は一気に踏み込んだ。

挨拶代わりのジャブを送り込む。

なんてことはない。野郎はワンツーを綺麗に避けやがった。

続けざまにフェイントを入れる。

左フックを匂わせながら、前蹴りを腹に叩きこんでやった。

叩きこんだ。だがよぅ。それはねぇぜ?

「ダメージ消すとか。マジでやる奴いんのかよ……。」

思わず本音が零れ落ちやがった。

野郎は当たると同時に後ろに跳びやがったんだ。

そうとしか考えられない。感触がそうとしかいってねぇ。

「強いよ。君。十分に、だって、あんな速い攻撃して囮も一瞬の判断で入れた。凄い。」

何かが切れた。ここまで余裕綽々な野郎は見たことねぇ。

俺は強い。この野郎も強いのは知っている。

だから、切れた。

「余裕かましてんじゃねぇぞ……!」

一気に間合いを詰めたのは俺のはずだった。

「!?」

なのによ。どうしてだよ。

「まだまだ。」

なんで俺は、空を見ているんだよ。

「強くなれるよ。君。素直すぎるからね。筋がね。」

そういって、もやし野郎は良い面で笑いやがった。

これが、俺と綾瀬一人との出会いだった。

「なぁ。何やった?」

「間合いつめて投げた。」

「はぁ?なんだよそれ…見えなかったわ。」

「うん。姿勢を低くして、君の腕を下から掴んでそのまま勢い殺さずに。」

「近藤。近藤晴彦だ。」

「綾瀬。一人。「ひとり」って漢字で「かずと」」

「おう。カズト。てめぇ。武道やってるな。」

「まぁ、ね。」

やっぱな。じじいが言ってたぜ。合気道とか古武術と本気でやりあうと実力を知るとかなんとか。そんな野郎本当にいるとは思えなかったんだがな。

TVとかでたまに出てる。金がほしいだけの野郎どもばかりみてりゃそう思うのも普通だろう?

「なんでだよ。」

「え?」

「なんでパシリなんてやってんだよ。てめぇ。強いだろ。」

「あぁ。うん。」

俺は身体を起こし、胡坐で座った。そうすると一人も隣に座った。さっきまでの空気が何もなかった。

途端にこいつは別人なんじゃねぇかってほどに。

「いえねぇなら。いい。」

「修行。」

「はっ?」

「だから、修行だって。」

修行、修行と来たか。俺はたまらず大声で笑った。古風だな。それでいて律儀な野郎だぜ。

「笑わないでよ。」

「いやぁ、すまん。あまりにも面白くてな!」

「必要なんだから仕方ないだろう。僕だっていじめられたくていじめられているわけじゃない。」

「理由あってか。にしてもよくやるぜ。俺なら即座になぐり飛ばしてる。」

「うん。でも、耐えなきゃいけないのも修行だから。」

その言葉と、カズトの顔が今でも焼きついてる。

悲しいそうな。それでも、何処か覚悟している。一本細いが、真っすぐ何かが通っている。

変な感じだった。

「なぁ。おい。一発殴らせろ。」

「……良いよ。」

それからだ。

俺とカズトは何かとつるむ様になった。表面上は俺の専属パシリだ。手は抜かねぇ。

だがよ。それでも俺は俺で楽しかった。カズトもカズトで楽しんでいたんだろうよ。

初めてかもしれねぇ。友達だって、思えた奴は。

喧嘩は今まで通りやった。そこにカズトも連れて行った。数合わせだとかいって。

で、カズトは殴られて蹴られてた。

痛がって、蹲って、つらそうにして、俺以外が消えるとケロッとしやがって、笑いやがる。

「ハルの方が何倍も痛かったよ。」

そんな事言いやがって笑いやがる。

そんな面白い奴と出会えて暫く経って。

「どうした。お前はそれでも、一人の友ではなかったのか。」

なんで、こんな所で地べた這いずりまわってんだろうな俺は。

なんのこっちゃねぇ。

カズトに修行を科してた野郎がカズトの親父で、カズトが俺とつるんでいるのがばれちまってこんな事になった。

曰く、俺は修行を阻む輩だそうだ。

だったらよう。言葉で言えや言葉で。俺が言えたもんじゃねぇけどよ。

道場連れ込んで、師範の親父様とタイマンたぁなんだこれ?

「いってぇな……。」

「お前は痛めつけられる理由になるほどの事をしたんだ。」

「だか、らよう。話せよ。それをよう。本当に俺が悪いなら、謝ってやったんだぜ?」

もう遅い。ぜってぇぶっ殺す。

なんて、息巻いたのは本当数分前か。今はもう、身体がうごかねぇ。

何回ぶっ飛ばされたか覚えてない。

「言う必要はない。」

「なぁ。おい。てめぇは……。何をさせてんだよ。一人によ。アイツは」

ふとした時に悲しい顔してんだよ。殴られた後も。影であいつは人を殴っている。そんな事をした後も。

決まってアイツは泣きそうな顔してやがるんだよ。

「なぁ、おい……。アイツの事を考えてやれよ。親だろうが…。アイツの話聞いてやれよ。」

「お前には関係ない話だ。今後、一切関わらないと。」

そう言って、親父様は一枚の紙を目の前に置きやがった。

誓約書なんてかかれてやがる。

胸糞悪いぜぇ…こいつはよ。

「名前を書け。」

そういいながらよ、刃物取りだして、俺の動かねぇ身体を良い事に、指切って指紋とりやがった…

「書け。」

そういいながら、勝手にペン握らせて、勝手に書こうとしやがる。

うぜぇ。

「うぜぇ……んだよ!」

振り払う。ついでに誓約書を破く。

「貴様……!」

顔面をけられた。あぁ、骨やっちまったぜ。

もう痛みもないが、冷たい感触が折れた事を教えてやがる。

「てめぇよ。親だろうが……。俺は、よぅ。アイツのダチだぜ……。」

だから、なんだろうな。俺はカズトのダチで…。だからなんだよ。

「俺は…よぅ。俺の……たった、一人。一人のダチなんだよ……。勝手に、奪おうとすんじゃねぇ…ぞ!!」

そこから、俺の記憶はない。

あるのは、白い天井があって、俺が傷だらけで。

横でカズトが泣いてた事。

それだけ。

「おぅ。カズ何、泣いてんだよ。」

「ハル……。ごめん。ごめんなさい。」

「おぅ。謝罪なんざ、糞食らえ。おい、カズ。てめぇは俺のパシリだ。俺のほしいもん買ってきな。」

「ハル……。ハル……!うん。待ってて、すぐ買ってくる!!」

パシリが笑いながら走ってく。

変な姿だぜ。

笑うと顔が痛んだが、どうでも良かった。

あれからどうなったかは判らない。病院で寝ていても、親父様はこなかったし、カズトは何も言わなかった。

まぁ、俺が問いたださなかったのもあるかもしれねぇ。

だがよ。

あの一件以来、カズトは良い面見せて、笑うようになった。

そいつだけが、良い事だったぜ。

今でも、俺はカズトをパシリに使っているし、カズトは今でも殴られている。

それでも、今までのようではなくなった。

喧嘩を吹っ掛けて来る奴をボコボコにしている。

なんでそうなかったかはしらねぇし、どうでもよかった。

ただ、不満といえば、カズトが強すぎるってぇ噂が出すぎて、俺とカズトのコンビに喧嘩を売る野郎が消えちまった。

それだけが残念な事だったが。

俺は、今の普通っていう生活も、悪くないって思っている。

だからよ。

俺は、今の生活で、満足している。

「ハル!遊び行こう!」

「ハルヒコさん。ボーリング行きません?カズトがどうしてもスコア100以上にしたいって駄々こねて」

「あぁ、言わないでよ!」

「カズはもっと腕っぷし鍛えろよ。強いけど、全然強くない。」

「ま、確かにな。飯食ってでかくれよ。」

「た、食べてますよ。」

「おう、カズトはな。牛乳2リットルを飲んでいるけど背が伸びないの!」

「ああ!なんでいっちゃうの!!」

「おっしゃぁ!!今日は全員でボーリング大会といこうじゃねぇか!」

「おぉ!!」

いつの間にか、俺も。

ダチが増えたもんだ。

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