魔王と勇者と暗殺者 第三十六話
ジルベルトの住まう家は城壁の近くに位置する比較的貧しい人々が暮らす地区であった。
家は大きくは無かった。申し訳ない程度の庭。人一人が丁度横になる程度の庭があった。それは家の真後ろにあり、四方を石造りの壁で覆われている。決して外部から覗き見る事が出来ないように。入るには家の中に真っ直ぐ通る廊下を突き進み、隠し扉となっている突き当りの壁の向こう。
今はもう海を挟んだ遠く東の地。ジルベルトの眠る墓石にカインは結局手を合わせる事もせずに、彼とアンナであった土の塊と一本の肋骨を予め作られていた二人のための墓に埋葬した。
あの時、光に包まれてカインはジルベルトの声を聞いた。
「ここは……。」
「ロイズ。いや、カイン。」
「ジル。これは一体。」
「すまないね。あいつは私を狙っていた。ずっと。だが、私にとって念願たる君という存在が確認されたことによって最優先は君に移ったんだ。」
「……俺の左腕。」
「そうだね。」
「守護者……だからなのか。」
「うん。」
「奴は魔族なのか。」
「それは、判らない。」
「判らない?」
「君に渡したいものがあるんだ。」
「……。」
「この光が消えた後。私は死ぬ。書状を用意してある。それを持って西に渡り、ある人に渡して欲しい。」
「……厄介ごとはお断りだったんだがな。」
「申し訳ない。押しつけてしまうようで、その通りだが。それでも、君は守護者としての適合を見せてしまった。それが偶然か必然かなんてどうでもいいんだ。君がそうである確証がとれた以上。君にはやるべきことが出来てしまい、私にも、またやるべき事があった。」
「そのやるべきことは一体なんだ?」
「勇者と共に。魔王と対峙するんだ。」
「……。」
「君にしかできない。君にしか頼めない。君しか居ない。」
「はぁ……。」
「それと、もう一つ。」
「まだあるのか。」
「私の亡骸を家の後ろ。庭があるんだ。そこに埋めて欲しい。アンナと共に。」
「―――どういう。」
「頼んだよ。」
それが最後であった。
勇者側は依頼などをこなしながらゆっくりと移動中です。
その中で、個々の力に対する疑問や殺す事について、生きる事について、自分が何故こんな事をしているのか。
そんな事を考えつつも進んでいる状態です。
勇者側も書けるのならば書いていきたいです。
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