魔王と勇者と暗殺者 第二話
数日前に扇動行為を行った男の殺害。楽な仕事ではなかった。男は静かに紙に何かを書き止めている。
蝋燭の淡い灯が儚く男の居る一室を照らしているが見えるものはそう多くなかった。ベッド、イス、テーブル、そしてその部屋で一番大きなものはクローゼット。
男の部屋にはそれらが綺麗に並べられている。やがて、男は書き終えると、部屋を後にする。
廊下に出ても、うす暗さが変化する事無く、ただ蝋燭の光が道を照らすだけであった。男はその道を迷うことなく歩を進め、扉の前で立ち止まった。
一瞬の間を持ち、開ける。目の前にはテーブルが置かれ、書物が散乱していたが、椅子に座る3人の女性。中央に対峙するように座るが一人、左右に一人づつ。
彼女達はその事に気にしているそぶりも見せず、まして彼女たちは男を見るわけでもなかった。
「貴方にしては、しくじったようね。」
中央の女性が男に声を掛けていた。
「情報に無い者が居た。」
疲れている。そうあからさまにため息をついた後、男は喋る。
「臨機応変にが貴方の良い所だったはずだが。」
対峙する女性が口を開いた。室内でもフードを被るその姿は女性と判断するには声質以外では難しいだろう。
「死者の眼球から死ぬ直前の姿を見る。いくら臨機応変でも想像できない事態が起こるという事だ。」
「レアスキル持ちを考慮しろというのは無理なのは判るわ。」
「……。」
「けれども、貴方の仕事に支障が出るだけなく、我々にも影響が出る。」
「罰金?」
「それもある。」
「軟禁?」
「それは、ない。」
「無い?」
「別件。」
「ちょっと待って――。」
「拒否は不可。」
「……。」
「内容は、これ読んで。」
「―――本気か?」
「えぇ。」
「偽物の類。」
「ないわ。」
「何故。」
「見た事ない?」
「………。」
「書状の用紙に、サイン、押印。全て本物。」
「難儀な…。」
「えぇ。貴方のお陰。」
「選択肢は一つか。」
「えぇ。判り切っている事をいうものじゃない。」
「………。」
「臆病風?」
「あぁ。危険が高い。生存率の低い仕事はなるべく受けたくはないのが本音だ。」
「貴方、良くそれで仕事できるわね。」
「楽しいからな。」
「職人の鑑だな。でも、言ったはずよ。」
「判っている…。」
「ほら、行った。そして死んできなさい。」
男はその言葉を聞いた後、その空間から脱出した。男は部屋に戻るとクローゼットを開け、そのクローゼットの中から、複数個の箱を取り出し、中身を取り出す。
布に包まれた品々は皆、刃物を持つ凶器であった。男は腕に、腰に、太ももに、ふくらはぎに、踵に、胸に。装備していく。
全身に装備される凶器の数々は音も立てずに身体に張り付いているかのように静かであった。
やがて、男は服装を変える。基調をこげ茶のフード付きのものを着込む。次に、男は顔に手を伸ばし、髭を剃り始める。
もっとも、顎髭に少しばかり生えていたものであるが。男は一通りの身支度を整えると部屋を出た。向かう先を考えてため息が思わず漏れてしまう。
予想外の事には慣れていると思っていた。それが甘かったと。

蝋燭の淡い灯が儚く男の居る一室を照らしているが見えるものはそう多くなかった。ベッド、イス、テーブル、そしてその部屋で一番大きなものはクローゼット。
男の部屋にはそれらが綺麗に並べられている。やがて、男は書き終えると、部屋を後にする。
廊下に出ても、うす暗さが変化する事無く、ただ蝋燭の光が道を照らすだけであった。男はその道を迷うことなく歩を進め、扉の前で立ち止まった。
一瞬の間を持ち、開ける。目の前にはテーブルが置かれ、書物が散乱していたが、椅子に座る3人の女性。中央に対峙するように座るが一人、左右に一人づつ。
彼女達はその事に気にしているそぶりも見せず、まして彼女たちは男を見るわけでもなかった。
「貴方にしては、しくじったようね。」
中央の女性が男に声を掛けていた。
「情報に無い者が居た。」
疲れている。そうあからさまにため息をついた後、男は喋る。
「臨機応変にが貴方の良い所だったはずだが。」
対峙する女性が口を開いた。室内でもフードを被るその姿は女性と判断するには声質以外では難しいだろう。
「死者の眼球から死ぬ直前の姿を見る。いくら臨機応変でも想像できない事態が起こるという事だ。」
「レアスキル持ちを考慮しろというのは無理なのは判るわ。」
「……。」
「けれども、貴方の仕事に支障が出るだけなく、我々にも影響が出る。」
「罰金?」
「それもある。」
「軟禁?」
「それは、ない。」
「無い?」
「別件。」
「ちょっと待って――。」
「拒否は不可。」
「……。」
「内容は、これ読んで。」
「―――本気か?」
「えぇ。」
「偽物の類。」
「ないわ。」
「何故。」
「見た事ない?」
「………。」
「書状の用紙に、サイン、押印。全て本物。」
「難儀な…。」
「えぇ。貴方のお陰。」
「選択肢は一つか。」
「えぇ。判り切っている事をいうものじゃない。」
「………。」
「臆病風?」
「あぁ。危険が高い。生存率の低い仕事はなるべく受けたくはないのが本音だ。」
「貴方、良くそれで仕事できるわね。」
「楽しいからな。」
「職人の鑑だな。でも、言ったはずよ。」
「判っている…。」
「ほら、行った。そして死んできなさい。」
男はその言葉を聞いた後、その空間から脱出した。男は部屋に戻るとクローゼットを開け、そのクローゼットの中から、複数個の箱を取り出し、中身を取り出す。
布に包まれた品々は皆、刃物を持つ凶器であった。男は腕に、腰に、太ももに、ふくらはぎに、踵に、胸に。装備していく。
全身に装備される凶器の数々は音も立てずに身体に張り付いているかのように静かであった。
やがて、男は服装を変える。基調をこげ茶のフード付きのものを着込む。次に、男は顔に手を伸ばし、髭を剃り始める。
もっとも、顎髭に少しばかり生えていたものであるが。男は一通りの身支度を整えると部屋を出た。向かう先を考えてため息が思わず漏れてしまう。
予想外の事には慣れていると思っていた。それが甘かったと。
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