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長編小説 山賊は悪党で 弐拾

長編小説 山賊は悪党で 弐拾

 人々の口から、振り動かす身体から沸き起こる喧騒が町全体を包み込んだ。
 領主城の広場は、すっかりとその姿を処刑場へと変えている。急造された木造の高台に釣り下がる二本の縄が弧を作り垂れている。
 処刑場の門前には数十を越える人々が集まり、衛兵が作り出す壁ごしから処刑を心待ちにしていた。
 誰もが願っていた。ある者は、好奇心に目を輝かせながらその処刑を今か今かと待ちわびる。ある者は、眉間に皺を寄せ挙げながら、何やら呟きながらも処刑台を見つめている。
 処刑の時が来た事を告げるような大きな歓声が挙がり、ダニエルが高台に昇った。後ろからカスパルが昇ってくるが、必死に抵抗しているようで身をよじっている。
「観念しろ!!」
 野次が飛ぶとそれに呼応するかのように、カスパルに向けて罵詈雑言が投げ掛けられる。
 よくも今まで騙してきたな!
 お前が俺の娘を攫ったんだろう!!
 カスパルが奴隷商人とも関わりがあった事まで露見していたので、民衆からの辛辣な声が押し寄せてくる。それはまるで大雨によって作り出された土砂を含む濁流の唸り声のような低く、それでいて地鳴りのような音となっていた。
「静まれ!」
 その喧騒を、ダニエルが治めていく。すると、その濁流は途端に姿を消していく。民衆はダニエルの言葉に、徐々に口を噤み始め、処刑の始まりを待ち始める。
 まだ小さなざわめきこそあれど、自分の声が届くと判断したであろうダニエルは大声を張り上げた。
「これより、カスパル・セレスタン・グラネストの処刑を執行する!!」
 鎖帷子の鎧にその堂々とした佇まいに民衆は魅入っているように、誰もがダニエルを見つめていた。



もうすぐ完結予定。

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