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長編小説 山賊は悪党で 壱九

長編小説 山賊は悪党で 壱九

 ダンの臭いをディックはきちんと嗅ぎ分けていた。だが、容易に姿を見せる事はしない。十二分に城門と距離を置き、違和感無く、まるで尿意が急に襲ってきた旅人を演じるダンが林の中へ隠れるまでじっと息を潜めていた。
「外部の手を借りる。ザックスという商人の馬車を故意に襲え、司教の処刑が始まった頃合いに町を立つ。城門を出たら即座に襲え」
 ダンは口早に言った。
「大丈夫?」
「商人だ。約束を疎かには出来んはずだ。それに、信用はできる」
「解った」
 ダンは布切れを落とした。
「判るな?」
「うん」
 それは、ザックスの身に付けていた衣服の切れ端だった。


 クレアが作り出すその空気と突き刺さった瞳。
 宿屋に戻り、山賊達と向かい合ってもザックスの胸の中にはあの時の茶番劇よりもクレアの存在が目に焼きついていた。
 三人の山賊は、ザックスの報告を待っている。口火を切るザックスの表情は柔らかい。
「首尾は上手くいきました」
「そうか」とダンは言った。
「こっちも大丈夫だぜ?」とユーリは軽口を言うかのようにあっさりと言った。
「処刑はいよいよ明日ですね」
 ボーは神妙な面持ちで処刑と言う単語を述べた。
「運命の日ってか。冗談きついよ」
「やるしかないです」
「そうだけどさ」
 ユーリは嫌そうに顔を歪める。本来ならば、絶対に請け負う事の無い仕事という事になる。だが、彼らはそれを行う。
「怖気づこうが、計画は実行に移す」
 ダンの言葉に、ユーリは手をひらひらと上下に振りながら、椅子に座りテーブルに右肘を置いて頬杖を作る。その表情には嫌々というものは消し去り、あるのはゆるやかな時の流れを待ち望む、まるで少年のような生き生きとした興奮が漲っていた。



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