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長編小説 山賊は悪党で 壱八

長編小説 山賊は悪党で 壱八

 軟禁というには相応しい環境の中で、双子姫は生活していた。外へ出る事は許されず、暫定領主の思惑のみで、外出が許可される。そこには自由は無く、要求される事を拒めば最愛の親族が死ぬ事になる。暗黙の了解にならざるを得ない現実を突きつけられながら、双子姫は憔悴していきながらも、まだ生きる事を諦めては居なかった。それでも、自らの意志では決して開く事の無い扉が開かれる時、二人は恐怖を覚え、震えずには居られない。どちらかが部屋を出て、どちらかが残される。
 開錠の音と共に騎士が二人、双子姫が軟禁されている部屋に入ってくると、赤いドレスを着込むクレアの腕を掴むと外へ連れ出そうとする。
「出ろ」
「ク、クレアを何処へ連れて行く気ですか!!」
 ヘレナの声は響き渡るだけで、屈強な男の羽交い絞めを脱する術は無く、ただ連れて行かれるクレアを眺めるだけだった。
「クレア!」
 再び、施錠の音が響き渡ると途端に静寂が舞い降りる室内だったが、声を殺しきれない嗚咽を漏らすヘレナの姿が小さく残された。
 残された者は連れ出された者が生きて帰ってくる事を願うしかない。



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テーマ : 自作連載ファンタジー小説
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