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短編小説 前と僕と後『僕とスキンヘッドと後』

短編小説 前と僕と後『僕とスキンヘッドと後』

 陳腐な話をされた。それもスキンヘッドで強面の男が、失恋を経験して傷心して自分の恋愛話を語り始めたのだから、僕は一体どんな顔をしてその話に相槌を打てば良かったのか今でも判らない。ただ、僕はぽつりぽつりと吐き出していくスキンヘッドを最寄の喫茶店に連れ込んで、一杯四百五十円のコーヒーを奢る事になってしまっていた。
「涼子は、本当に可愛くてな」
「そうですね」
 僕は、水っぽいコーヒーを啜った。
 店内で流れているのは雰囲気にこれでもかと言うくらい似合わない、今人気が出てきているアイドルグループの曲だった。店内は薄暗いながらも落ち着いた雰囲気で、僕は何ともなしに、これは裸電球みたいな安心感があると思っていたけれど、この曲で全てが台無しになっていた。
「アンタも可愛いと思ったのか」
「否定はしませんよ」
 僕が素直に想いを吐き出したのは、スキンヘッドの会話に興味が無かったのもあるが、喫茶店のマスターも流れている曲に顔を顰めていたのを見て、これは壮年のマスターの趣味で無い事に、変な安堵を覚えていたからだった。
「満更でもなかったのか」
 少し、棘のある声に聞こえ、僕は自分の顔が引き攣るのを感じていた。本音を言って良いものかと逡巡したが、どうにもスキンヘッドが怒り出すように思えなかった。
 まじまじと見つめたわけでもないけれど、出会った時の野性的な怖さは微塵も感じられなかった。



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