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長編小説 山賊は悪党で 壱壱

長編小説 山賊は悪党で 壱壱

「クレアは、喋れないのにどうやって気持ちを伝えるの?」とディックは言った。
 ヘレナは少々の間を置いてから口を開く。
「この子は、そういうのが苦手で」
 ヘレナには、クレアが何故言葉を喋れなくなったを詳しく知らない。ただ、引き金になった出来事だけは知っていた。
 ヘレナも悲しみに打ちのめされた出来事。
「勿体無い。可愛いのにね」とディックは深く聞かなかった。
「でも、ディックとは仲良くなれそうです」
 そう言ってヘレナはディックの顔を見上げて笑みを零す。クレアは小さく寝息を立て始めた。
「そう?」
「えぇ」
「お姉ちゃんは、獣人怖くない?」
 ディックの不思議そうな声に、昨日までのヘレナ自身を思い浮かべる。
「最初はとても、怖かったですよ」
 暗闇に溶け込むようにそこに居たのは一頭の熊。誰だって初対面でそのような出会い方をすれば怖がるのも無理もない。
「でも、こうして会話が出来てディックを知る事が出来たので、今はあまり怖くありません」
 だからこそ、その後――今、この時まで触れ合えたからこそ、その言葉を素直に言う事が出来たヘレナだった。
「聖都教を信仰してないの?」
 聖都教では獣人を悪魔としているので、民衆の多くは恐怖の対象だった。獣ですら狼などを悪魔として、異形が化けているものとして見ている節がある。だからこそ、ディックにはここまで会話できた事に多少の戸惑いを覚えてそう問い掛けた。
 他の山賊はかなり早くに慣れた人が多かったが、ヘレナとクレアは彼らよりもずっと早かったとディックは思っていた。
「正直言うと、あまり……父も母も、熱心な信仰者ではなかったので」
 ヘレナそう言って少し顔を俯けた。言いにくい事があるようだったが、ディックは深く問い掛ける事もしなかった。



悪党は何処までいっても悪党で。
ならば悪党は、悪党の矜持でぶつかり合うだけ。

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