長編小説 山賊は悪党で 八
「きゃぁぁ!!」
目を覚ました、双子姫の一人が悲鳴を挙げる。すると、もう一人も起きて辺りを見回す。後者は落ち着いている。というよりも、感情の篭っていない表情と視線をヴァルト達に向けるだけで、後は先に起きたお姫様に抱擁されているだけであった。
その悲鳴に、興を殺がれたというよりか、救われたのかもしれない。ヴァルトは視線を外して、双子姫を見つめると
「――起きたか」と小さく漏らした。
ヴォルフも、先ほどの会話などなかったかのように、新たな枝を焚き火にくべながらも、双子姫を一瞥する。
その風体に怯えつつも、先に起きたお姫様――青いドレスを着込む少女は気丈にも、柳眉を逆立ててながら
「こ、ここは何処ですか。貴方達は――」と口を開いた。
その表情と態度にヴァルトもヴォルフも感心する。二人とも、見てくれに関しては怖い印象を持たせるものだと認識しているので、少女が怖がるのも無理は無いと感じていたが、まさか目覚めてからこんなにも早く自分達から情報を聞き出そうと考えるとは思わなかった。
ヴァルトはこの時、貴族の子供でもぬくぬくと親の権力という箱庭で育っていないのかもしれないと感じていた。とにかく、そんな考えを面に出さずに会話を始める。
「ここは、俺達山賊のねぐら」
ひとまず、聞かれた事に素直な返答する。すると、少女は口を噤む。どうやら、予想以上に怖がっていたようだったが、ヴァルトは返ってその反応にほっと胸を撫で下ろしてしまった。ともかく、ヴァルトは話を進めるために会話を試みる。
「安心しな。何もしない。だが、聞きたい事がある」
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誤字脱字、表現の不備があるかもしれません。悪しからず。
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