長編小説 山賊は悪党で 六
「ヴァルト。緊急。だけど隠れてる」
その言葉に三人は火を消しながら腰を浮かし、身を屈ませた。途端に世界は闇に支配される。
三人はまだ目が慣れていないが、話を進めていく。ヴァルトはボーのために矢を握った。
「ディック、どっちだ」
ヴァルトは小さく呟いた。するとディックが動く。その気配に三人はディックの方向を察知して身体を向けると、やはりそちらから声が聞こえてくる。
「ボーの方。町側の街道沿い」
「行くぞ」
おぼろげながら姿も見え始める辺り、夜目に慣れている。颯爽とまでは行かないが、それでも速い速度で闇夜を駆け抜ける。
暫くするとボーの後ろ姿が確認できた。遠目に街道が見える。その視線の先にはランプであろう明りが揺らめいて、馬車が止まっていた。
「ボー」
ヴァルトが小さく、囁きながら視線を向けると、その先の街道から声が響いてくる。
「馬車が襲われています」
ボーの言った通り、馬車が何者かに襲われているのが窺い知れた。
「――同業者か?」
咄嗟に、ヴァルトがそう呟く。この街道にはヴァルト以外に山賊は居なかったが、絶対ではないし、今日ここに来た賊かもしれない。同業者といっても盗賊という事も考えられる。
だが、ヴォルフとダンはその言葉を否定した。
「いや、あの身のこなしは違うな」
「鍛錬を受けた者」
ほぼ同時に囁かれた言葉にヴァルトは不敵に笑ってみせる。
「流石、ヴォルフにダン。頼りになるぜ」
「どうしますか。頭」
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