魔王と勇者と暗殺者 第三十二話
村の前には森が広がっている。そうここは忘れ去れた村。人を選び、人を拒む。それがこの村の結界。それがこの村のスキル。数多の犠牲によって作られた絶対防御。ここを通過するには膨大な魔力による支配。村を肯定し、己の存在を肯定する者だけが入る事ができる。
目の前にいるのは膜。結界という本来、眼には視認できない膜。それらを囲むように人が蠢く。膜の外に蠢く者たちは、一斉に牙を剥いた。拒絶する村。それを村人は内から見ている。光を失った瞳で全てを諦めているかのように。だが、武器を持つ者たちも存在している。
ここを守護する者達。何百年も護ってきた者達。死は彼らに何の意味も持たない。目的を果たす為に。村人はただ、全てを諦めている。だが、彼らだけは目的を持って死に行く。それだけの違いは村の中に存在していた。
そしてカインは眼を覚ます。
「生きて、いるのか。」
闘争の空気がカインの眠る失われた地にまで忍び込んできたのだろうか。カインは半ば強制的にとも感じられるほどの俊敏性を見せながら飛び起きた。
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