魔王と勇者と暗殺者 第四十八話
「おい!」
大男――ヴィルフの掛け声が轟き、化け物の一撃を自慢の大剣で受け止めた。
「ほいよっと!」
槍使いの男――ケルマンの鋭い突きがヴィルフの脇から伸び、化け物に吸い込まれる。
「かぁ! かてぇ!」
そう言いながらも、しっかりと仕留めている辺りは流石と言うべきか。崩れ落ちた化け物の躯が数体転がっていた。
「どうやら、この部屋らしいな」
扉を大剣で叩き斬ると二人は中へと入っていく。
「当たりだな。にしてもでけぇな」
ケルマンは視線を上に向ける。目の前には見上げなければ全貌を把握できないほどに巨大な黒塗りの門が鎮座していた。ヴィルフはおもむろにその門に近寄ると、地面や門自体に、尋常ではないほど細かい術式が刻み込まれている事に気がついた。
「相当なモノを練りこんでいるようだな」
ケルマンもそれを確認すると、ため息をついた。さて、どうしたものかと言ったところだろう。安易に近づきすぎて、変に作動されても困るということである。
「自慢の魔を絶つ剣さまはどうなのよ」
「コイツに聞いてくれ。俺はこんなモン斬った事が無い」
「つっかえねぇ!」
「……やるだけ、やってみるさ!」
その声と共に、背中から抜刀する大きな刃はヴィルフの振りぬこうとする腕の力と、腰を落とす動作が加わり、風を切り裂く音を鳴らしながら聳え立つ門。の手前にある地面へと目掛け振り下ろされた。剣が地面に描かれた術式に触れた瞬間、昼間よりも明るい光が辺りを包み込む。
「やったか?」
ケルマンは予想以上の反応に、目を手で隠しながら呟いた。
「無理だな」
ヴィルフの言葉通り、地面には傷一つ付いてはいなかった。
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